陳浩基『倖存者』
倖存者 (博客來)
陳浩基『倖存者』(生存者) (明日工作室、2011)
香港の学生、阿杰は、旅行で台湾を訪れる。しかし、チェックインしたホテルを出て目にしたのは、つい今までいた場所とは似ても似つかない荒れ果てた異界を、全身を白い粘液で覆われた三本指の怪物が徘徊している光景だった。
陳浩基の初単著となる短めの長篇。出版元の明日工作室は当時、台湾推理作家協会賞の入選作や協会員の作品を "口袋書"(屋台やコンビニなどを中心に売られるA6判の本)として継続的に刊行していて、この作品もその一つとして、「主題館」というレーベルから出版された。惹句や表紙は明確にホラーを志向しているが、作者自身は本作を、ホラー("靈異小說")とSFとミステリ全ての要素を持っている作品、と説明している。グロテスクさや全体的なジャンル感のバランスは小林泰三あたりの作品を思い出させるものの、ユーモアや遊びはなくストレートな筆致でまとめている。
終盤で明かされる事実はある種見慣れた発想に基づくものだが、異変が解体されていくことにより聞き手を別種の恐怖へと追い込んでいくような説得の巧みさ、またそれを支える材料を物語へ手際よく仕込んでいた周到さには、作者のエンターテインメントをまとめ上げる素質を十分に伺うことができる。3 1/2
陳浩基『倖存者』(生存者) (明日工作室、2011)
香港の学生、阿杰は、旅行で台湾を訪れる。しかし、チェックインしたホテルを出て目にしたのは、つい今までいた場所とは似ても似つかない荒れ果てた異界を、全身を白い粘液で覆われた三本指の怪物が徘徊している光景だった。
陳浩基の初単著となる短めの長篇。出版元の明日工作室は当時、台湾推理作家協会賞の入選作や協会員の作品を "口袋書"(屋台やコンビニなどを中心に売られるA6判の本)として継続的に刊行していて、この作品もその一つとして、「主題館」というレーベルから出版された。惹句や表紙は明確にホラーを志向しているが、作者自身は本作を、ホラー("靈異小說")とSFとミステリ全ての要素を持っている作品、と説明している。グロテスクさや全体的なジャンル感のバランスは小林泰三あたりの作品を思い出させるものの、ユーモアや遊びはなくストレートな筆致でまとめている。
終盤で明かされる事実はある種見慣れた発想に基づくものだが、異変が解体されていくことにより聞き手を別種の恐怖へと追い込んでいくような説得の巧みさ、またそれを支える材料を物語へ手際よく仕込んでいた周到さには、作者のエンターテインメントをまとめ上げる素質を十分に伺うことができる。3 1/2
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